庭国内を歩く主要な道路が「園路」である。

この園路は、ほとんどが滑らかな曲線を描くようにつくられている。むしろ直線をわざわざ避けるようにつくられているのが普通である。

起伏のある土地を歩くには、なるべく平坦な部分を選んで歩くのが自然である。自然に逆らわずにできた道が当然のように曲線になったと考えられる。

廻遊式庭園は、もともとある景観を利用し、あるいは自然を写すことを基本につくられているため、園内の道も滑らかな曲線となつているのである(註3)。

また、園路を曲線にすることで、鑑賞者の視界をあえて遮るという重要なはたらきも持っている。

園内を歩いていて、次に何があるかをあえて隠すことによる演出の効果を引き出しているのである。むしろ、作庭するものにとっては、この演出効果のために曲線にすることがほとんどであろう。

《六義園》においても同様で、景色を直線状にずつと見渡すことができる園路は千里場(旧馬場跡)を除い
て他には見あたらない。

さらに、曲線には直線にはない効果がある。

直線路ではその道によって左右をはっきりと分けてしまい、視界が前方に向けられてしまうことになるが、曲線ではやわらかい雰囲気を作り出し、周囲の景色を楽しむ心の余裕をつくりだすことができる。

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また、園路の幅に変化をもたらすことで、鑑賞者へのはたらきかけを変えることができる。

幅が狭いところから広くなる部分では、鑑賞者の歩く速度はゆっくりとなり自然と周囲に目が向くようになる。

逆に、幅を徐々に狭めることで、鑑賞者に緊張感をもたらすことができ、園路の先にあるものに対する不安感や期待感を醸しだすことができるのである。