古代では、貴族たちが敷地内に大きな池を設け、この池に船を浮かべあるいは池の周囲を歩く形式の庭が作られた。この形式は池泉周遊式と呼ぶことができるであろう。

それが中世に入ると、禅宗寺院の庭や、武家の庭園が広まることになる。多くの場合、一箇所にとどまり庭を眺める形式のため、絵画を見るような形式の庭園がつくられた。絵画的構成庭園とも呼ぶことができる。

その一方で、茶室を中心とした庭、いわゆる露地が発展した。
この露地で重要な役割を持つのは園路の構成である。

081117_155113

そして近世に入ると、池泉廻遊式庭園が登場する。池泉廻遊式庭園とは、庭園の中心に池泉を配置してその周囲に、茶室や小山を点在させて園路で結び、廻遊していく形式の庭園である。古代から中世までの庭園の要素を取り入れているため、庭園様式の集大成ともいわれている。

そして、この非整形の構成は鎌倉初期にすでにみられる伽藍配置などでよくいわれる「左右非対称性」や「自由な配置」に共通するもので、庭園に限らず建物の配置や都市の構成にまで共通するものだという(註1).

非整形な、廻遊式の構成は人間の運動すなわち動線を前提した本質的な構成なのである。直交座標軸に沿って整形された寺院や伽藍配置、宮殿や住宅の配置など当初は形が整えられたものも次第にその形態は崩壊していき、本来の人間の行動形態に近づく形に変化していくのである。

しかし、勝手気ままに構成を考えるわけではないであろう。非整形の池泉廻遊式庭園の構成にも工夫は当然必要であると考えられる。