庭園がつくられ始めた頃にももちろん構成の難しさはあったはずである。しかし、近世になり廻遊式庭園が登場したことで、その難しさは一層増したと思われる。

廻遊式庭園の特徴として、まず広大な敷地につくられるということ、そして、既にある自然景観を生か
しながらつくられる、という点が挙げられる。自然の景観を生かしながらつくられた大規模な廻遊式庭園では、園内を歩きながら各所に配置された茶庭、池庭、枯山水、景色などを順に鑑賞することになる。

「見せ所」が何箇所もあるということで、順路や、みる方向が重要になる。
一つの場所から他の場所へ移動するとき、それぞれの箇所の特徴や魅力を殺さずにスムーズに進められるようにすることが大切になる。つまり、作庭者が構成を考える際に、作庭者からみた庭園だけでなく、鑑賞者の動きすなわち動線を検討した上での庭園を考えなければならなくなったのである。

ここでとりあげる《六義園》も池泉廻遊式庭園のひとつである。

《六義園》は柳沢吉保が1702年(元禄15年)におよそ7年半の歳月をかけて築園したもので、万葉集や古今集などに登場する名勝88箇所をその園内に写したといわれている(註2)。

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実際に88箇所ものテーマを一つの庭園に集めるとなれば、その配置すなわち庭園の構成に相当な注意を払ったであろうことは当然予想される。

そこで、次に構成の工夫を探っていく前提として、どのようなテーマ、すなわち、廻遊式庭園の基本的な構成要素にはどのようなものがあるのかを確認しておくことにする。